美浜原発3号機の北側では一時、新原発建設のための調査が行われた=福井県美浜町、朝日放送テレビヘリから、林敏行撮影

 くらしや経済活動に欠かせないエネルギーの多くを、日本は外国からの輸入に頼っている。地球温暖化の影響も顕著になり、社会の脱炭素化も急務だ。エネルギーをどう確保するか、岐路に立っている。

 関西電力美浜原発が立地する福井県美浜町。公示翌日の16日午後、関電原子力事業本部の社員約50人が、JR美浜駅前の広場に集まった。視線の先で、原発推進の候補者がマイクを握る。

 「リプレース(建て替え)については、『美浜4号』というのが、全国で一番可能性が高いと思っている。東京電力福島第一原発事故以降で、初めて造るのが美浜4号機という思いを持って一緒に頑張りたい」。聴衆からは拍手が起きた。

 美浜町は関電の原発事業発祥の地だ。美浜1号機は1970年、電力大手で初めての商用炉として運転を開始。大阪万博の会場に送電し、「原子の灯」として知られた。しかし、原発事故を受け、国内で54基あった原発は、21基が廃炉に。再稼働したのは12基にとどまる。

関西電力原子力事業本部の社員らに美浜原発4号機の建て替えを訴える衆院選の候補者(画像の一部を加工しています)=2024年10月16日午後5時、福井県美浜町、佐藤常敬撮影

 事故以降、歴代政権は原発への依存度を低減する方針を掲げてきた。美浜1、2号機も廃炉が決まり、3号機の再稼働には10年かかった。1号機の後継炉のリプレースの調査も始まっていたが、原発事故で中断した。

岸田政権の原発回帰、美浜町議会は「高く評価」

 ところが岸田文雄政権で風向きが変わった。

 ウクライナ危機によるエネルギー価格高騰や脱炭素の流れを背景に「原発回帰」が鮮明に。22年8月、既設原発の最大限の活用、次世代革新炉の開発・建設に加え、「想定していない」と繰り返してきた新増設・リプレースにも踏み込んだ。

 美浜町議会も呼応する。22年10月、リプレースなどを求める意見書を賛成多数で可決。政府の原発回帰を「高く評価し、実現を大いに期待する」とした。

 今年1月、美浜町の住民代表との懇談会で、関電の森望社長は、リプレースや新増設の「検討を始めなければならない時期に来ていると思っている」と踏み込んだ。住民代表の1人は、3号機だけでは作業員の宿泊など地元経済への貢献が少ないと指摘。「『共存』はしているが、『共栄』しているとは言えない。地元が孫の世代まで共存共栄していくためには、リプレースの道筋を見せてほしい」と求めた。

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