小児科医ふらいと先生に聞く
様々なジャンルの「プロ書き手」によるニュースレターが配信される外部媒体「theLetter」で2023年10月8日に配信された記事です。
子どもの能力にはいろんな種類がありますが、すべて成長や発達していく中で身につけるものです。
ハイハイする能力、一人で歩く能力、走り回る能力、算数の問題を解く力、課題を与えられて解決する力などです。
その中に、文字を書いたり文章を書いたりする「書く力」というものがあります。
NICU(新生児集中治療室)を経験した子どもたちの発達外来をしていると、そういったハイハイや走り回ることはできるものの、字を書けない・文章を書けないという子どもは一定数います。
実際、この中には医学的に見逃してはいけない状態も潜んでいます。
今回は幼稚園・保育園の時期から必要とされる、子どもの「書くこと」をテーマに話を進めていこうと思います。
書く力の発達
子どもの書く力を解説する際、まずは、子どもの五感の発達の解説をしなくてはいけません。
このニュースレターでも何度か解説していますが、子どもの発達は視覚情報より聴覚情報が先に発達します。
子どもの五感は、お母さんのおなかの中でも発達していきますが、触覚→聴覚→視覚という順番で発達していきます。
皮膚の感覚を受ける受容体は口の周りから、妊娠7~8週頃に出現し、20週頃には全身に広がり、生まれる頃には完成しています(#1)。
五感の中で最も発達が遅いのは、物を見る「視覚」です。赤ちゃんの視力は生まれて1カ月は0.03~0.05しかありません。生後6カ月で0.1程度、3歳で1.0以上の視力を獲得します(#2)。生まれてすぐは、ほとんど見えていないのですね。聴覚は視力よりも早く発達し、内耳は妊娠20~23週に完成し、神経としては妊娠40週に完成します。
聴覚が視覚より発達が早いのは、お母さんの声など、おなかの外から色々な音刺激があるためと言われています。生後3日までの赤ちゃんを対象とし、様々な母親の声をランダムに聞かせた実験で、自分の母親の声を聞かせた時は、おっぱいを吸う間隔が有意に短くなったという研究もあります(#3)。
これらはお母さんのおなかの中にいる時の話ですが、生まれてからも言葉の発達は聴覚→視覚の順番で進んでいきます。
周りの大人や同じ子どもたちから聞く言葉を「音情報として」認識し、それから自分でもその言葉を話すようになります。そして文字を見て、それを「視覚情報」として認識し、頭の中でつなげていきます。
「theLetter」とのタイアップ企画
様々なジャンルの「プロ書き手」によるニュースレターが配信される「theLetter」と朝日新聞がタイアップして、一部コンテンツを配信します。この連載では小児科医「ふらいと先生」が執筆するニュースレターから、子どもの健康や医療に関連する記事を配信します。
文字は何歳で書ける・読めるのか
では、文字は何歳になったら書けたり、読めたりするのでしょうか。
うちの3姉妹はそれぞれ文字…