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 警笛を短くならして、1両のディーゼルカーがJR只見駅(福島県只見町)をゆっくりと出発していく。駅前旅館のおかみ、目黒ゆかりさん(57)が「只見線全線運転再開」と書かれた小旗を列車に向かって大きく振った。朝に2回、夕方に1回、只見線で町を訪れた人を見送るのが日課だ。

JR只見駅を出発する列車に手を振る目黒ゆかりさん=2024年1月、福島県只見町、河原田慎一撮影

 「『只見線にみんなで手を振ろう条例』があるんですよ」と、町の交流推進課長、目黒康弘さん(52)。「乗客におもてなしの心を示し、只見線への愛着を強める」という趣旨で、只見線沿線の各市町村に同様の条例があるという。

 只見町がこの条例を制定したのは2014年。このとき、只見線は途中が寸断された状態で、復旧がいつになるかの見通しもついていなかった。

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