Smiley face
指導放置を受けた経験を話す女性

 連載「『指導放置』東大アカハラ処分が問うもの」(https://www.asahi.com/rensai/list.html?id=2069)には、多くの反響が寄せられた。同じく「指導放置」の被害を受けたという当事者に取材した。

「だめ」「だめ」と言われ、八方ふさがり

 美術史を学んでいた50代の女性は15年前、博士課程在籍中に指導放置の被害を受けた。

 研究相談や進捗(しんちょく)報告をするため、指導教員の教授に面談を申し出ても「時間がない」「今日はだめ」などと言われた。作品調査に行きたくても、「行きたいだけではだめ」と許可がもらえなかった。自分で調査に行きたい理由を深め、加えても「だめ」の一点張り。どう研究を進めればよいのかわからず、八方ふさがりだった。

 それでも女性は、どうしても博士号を取得し、研究者のスタートラインに立ちたいと必死だった。調査に行けない分、文献を調べ、他大の教員にアドバイスをもらいながら、なんとか博士論文を書き始めた。在学延長や休学の制度を使い、博士課程には6年在籍した。

 「当時は意地になっており、『博士論文を書くのは、こんなにも大変なのか』と思っていた」

 ただ、自己流で作った研究計画書や、博士論文の章立てを見せても、「だめ」としか言われず、なぜだめなのか、どこを直せばいいのか、わからなかった。分野の専門性から、指導教員の変更も難しかった。

 心が折れかけた女性は両親に…

共有