京都大学吉田寮。1913(大正2)年に開かれた国内最古の現役学生寮では、今も100人ほどが暮らす。学生自らが運営し、低廉な生活費で暮らせる「自治寮」は全国各地に存在したが、今や減少の一途をたどっている。吉田寮も明け渡しをめぐる大学との裁判の渦中にあり、その行方が注目されている。
総合人間学部3回生の奥山朱凜さんが入寮したのは今春。実家の家計が苦しく、アルバイトを三つ掛け持ちしながら生活する。吉田寮なら、光熱水費を含めた寮費は月2500円で済む。「寮に入らなければ、今頃家賃を払えなくなっていた」
他の寮生たちにも話を聞くと、「寮で安く生活できるから京大を選んだ」「実家からはまったく援助を受けていない」という声も聞こえてくる。
吉田寮は第一に、経済状況に関わらず学ぶ機会を担保する福利厚生施設であり、さらに文化的拠点としての付加価値も育んできた。
年に一度の「寮祭」
その象徴といえるのが、5月24日~6月1日に行われた寮祭だ。
「バカなことをがんばってやらないと、つぶされちゃう。私たちは抗(あらが)おうとがんばっている。残そうという気力がある!」
寮祭の幕開け、寮の玄関前に集まった100人以上を前に寮祭実行委員長を務めた奥山さんが宣言した。
寮祭期間にはイベントが目白押し。恒例の目玉企画「ヒッチレース」では、車で全国に飛ばされた参加者たちがヒッチハイクを繰り返して祭日中の帰還を目指した。「鴨川レース」では、51人が鴨川の水流に逆らいながら2.3キロを走って競走した。
学内外の誰でも参加できる、年に一度の自由な寮祭は、この寮の「自治」あってこそだ。
自由と対話「大学の商標のような存在」
寮は自治会により運営され…