築200年の古民家を宿泊施設に改装したことをきっかけに、まちづくりに目覚めた1級建築士がいる。地域の人を雇用し、観光資源を掘り起こし、人を呼び込む工夫を重ねるうちに、再生させたい対象は家からまちへ広がった。

牧野嶋彩子さん

 目の前に広がる田んぼは春にはレンゲで紫色に染まる。視線の先にはなだらかな里山。千葉市に建築設計事務所「人と古民家」を構える1級建築士の牧野嶋彩子さん(52)が、千葉県大多喜町の築200年の古民家を改装して宿泊施設「まるがやつ」を始めたのは2017年の夏だ。昨年には町内の山あいに、サウナからの眺望が楽しい別の古民家の宿「ほりのみせ」も開いた。

 もともとは、モダンデザインの建物を、基礎や土台と柱をがっちり連結する現代の建築法で手がけてきた。知人に古民家の改築を依頼されたことがきっかけで、釘などを使わず建物自体の重みで接合部を締め付け、柱など構造材は再利用する在来工法を知り、その知恵に驚いた。

 木や石、和紙や土、竹などの自然素材に囲まれた空間ではぐっすり眠れた。以来、出身地でもあり、都心から好アクセスの割には物件の価格が安い千葉県内を中心に、古民家再生に関わるようになった。

 最初に改築を依頼された古民…

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