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笹川平和財団日米・安全保障研究ユニット主任研究員を務める福田潤一氏
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 トランプ米大統領は4月29日、ミシガン州で演説し、「歴代大統領のなかで最も素晴らしい100日のスタートだ」などと語り、経済政策の成果を強調しました。しかし、笹川平和財団の福田潤一主任研究員は、製造業の米国回帰が実現するかは疑問だとしたうえで、「現在、民主主義が危機を迎えている」と警鐘を鳴らします。

記事のポイント

トランプ氏の関税政策が製造業の回帰・雇用の増大を生むかは疑問が残る。福田潤一氏は、中間層の弱体化と格差の拡大に伴い、民主主義が危機を迎えていると指摘します。

 ――米国の製造業はなぜ衰退したのですか。

 「自由貿易の必然的な結果です。製造業はノウハウを模倣しやすく、人件費が安い国に移っていきます。米国ではかつて製造業が盛んで、就職して生活できる場所を提供することで分厚い中間層を形成していました。現在では米国だけでなく、日本や中国でも製造業の国外への流出が起きています」

 「米国は製造業に代わって、ITや半導体設計、金融などの知識集約型のサービス業で優位に立ちました。比較優位のある分野に自ら特化した結果と言えます」

 ――製造業の衰退はどのような現象を起こしたのでしょうか。

 「知識集約型産業は製造業よりも高度な知識や能力を求められます。しかし、これまで製造業に従事してきた人々が、直ちに必要なスキルを学び直す『リスキリング』をするのは簡単ではありません。バンス副大統領の著書『ヒルビリー・エレジー』で描かれたような失業する人があふれました」

 「しかし、トランプ氏が唱えるように、製造業が米国に回帰したとしても、競争力を維持するために安い賃金で働くことを求められます。企業もオートメーション化で対応するでしょう。結局、雇用は増えず、不満が解消されない状況が続く可能性があります」

■「民主主義の全盛期」、中間…

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