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7イニング制が導入されている昨夏のU18(18歳以下)ワールドカップに出場した高校日本代表=2023年9月9日、天母球場

 日本高校野球連盟が「7イニング制」についてのワーキンググループ(WG)をつくり、検討を始めた。

 井本亘事務局長は「(各都道府県の)全ての大会でどうすればいいかという視点で検討している。全国大会だけにフォーカスしていない」と話した。

 7イニング制を検討する理由のひとつは、肩やひじを含めた選手の健康を守ることだ。部員が多く、甲子園に出場するような強豪校だけでなく、少人数で野球に取り組む選手たちのことも考える中で、WG設置に至った。

 日本高野連によると、昨夏の第105回全国選手権大会では、1試合の平均試合時間が2時間22分(延長戦を含む。10分間のクーリングタイム込み)。七回までは1時間47分と、35分短くなる計算だ。

 また過去5大会でみると、投手の球数は1試合平均で143・2球。七回までだと112・6球だった。

 海外の高校年代では、米国や韓国のほか台湾やカナダ、ベネズエラなども7イニング制を採用。メキシコ、パナマ、プエルトリコなどは日本と同じ9イニングだという。

現場の反応は

 この日、第106回全国選手権大会の甲子園練習を行ったチームの監督らの、「7イニング制」への反応は様々だった。

 今春の選抜で準優勝した報徳学園(兵庫)の大角監督は「時代に合わせて進化することは必要」とした上で、「報徳は昔から『ラッキー・エイト』と言って、八回にいいことが起きるという伝統があった。(7イニング制になったら)新しい伝統をつくらないといけないですね」。

 大阪桐蔭の西谷監督は「野球は八回、九回が大事だと思っている。僕個人としては九回やらせてもらいたいなっていう気持ちは持っている。色んな方で色んな話をして、現場の声も聞いていただきたいなと思う」と話した。

 東海大相模(神奈川)の原監督は「あっという間にゲームが終わっちゃうし、点数を先に取れないと難しい」と、戦い方にも変化が生まれると予想した。

野球界の未来を考えて

 「もし7イニング制になったら、野球が変わる」。高校野球の現場で、指導者からそんな声を聞くことがあった。

 7イニング制で行われた昨夏のU18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で高校日本代表は初優勝した。チームを率いた明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は、とにかく先制点を重視した。「後半勝負なんて考えたらあかん。早い回から仕掛けないと」。下位を打つ打者が好調と見れば、次戦で打順を上げ、多く打席が回るようにした。

 記者はW杯で初めて7イニングの試合を取材。大会序盤は六回時点で「もう残り1イニングか」と戸惑いもあった。だが、慣れてしまえばスピード感のある攻防は見応えがあり、1球、1プレーの重みも増すと感じた。

 筋力トレーニングなどの進歩により、高校生でも球速150キロが珍しくなくなり、スイング速度も上がった。ただ、やはり体つきは15~18歳。出力が高い分、肩やひじなど、身体への負担は大きい。

 特に気温の高い夏場は試合時間の短縮も含め、選手の負担軽減につながるのは7イニング制のメリットだろう。地方大会では部員が9人ぎりぎりというチームもある。タイブレーク制や1週間500球の球数制限、今夏の甲子園で実施される朝・夕の2部制など、近年の改革の流れを考えれば、導入の検討が始まるのは自然とも言える。

 一方、9イニング制に比べてアウトが六つ減ることで、選手の出場機会が少なくなってしまうなどの課題もある。八、九回の終盤にこそ野球のおもしろさがある、という考えもあるだろう。

 これからの選手たちにとって、野球界の未来にとって何が最善か。議論を尽くしてほしい。(室田賢)

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