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中野博文・北九州市立大学教授
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交論 米国の政治と暴力

 トランプ前大統領が選挙集会で演説中に銃撃を受けた事件は、銃が蔓延(まんえん)する米国社会のいびつさを浮き彫りにした。建国以来、銃所持の権利が認められてきた米国の特異性について、北九州市立大学教授の中野博文さんに聞いた。

銃所持の背景にある建国時の「自治の思想」

 ――トランプ氏銃撃を知り、どう考えましたか。

 「意外には思いませんでした。ご存じの通り、米国では銃による乱射事件や政治家の襲撃は珍しいことではありません。学校でも毎年、子どもたちが乱射事件に備えた訓練をする。銃規制派の政権になると、逆に銃の売り上げが増え、銃メーカーの株価が上がる。それが米国社会です」

 ――銃の所持は、合衆国憲法で認められていると言われています。

 「憲法修正第2条は『よく規律されたミリシアは自由な国家の安全にとって必要であるので、人民が武器を保有し携帯する権利を侵してはならない』というものです。民兵と訳されるミリシアは、市民が自主的に組織した軍事組織のことですが、最高裁は2008年、同条について個人が銃を保有する権利を保障していると判断しました」

 「建国前、植民地や開拓地では、共同体を守るために市民が武装していました。そして州が集まって合衆国ができると、連邦政府が独裁的、専制的になることを防ぐ目的で、修正第2条が作られました。人民による自治の思想が、その根にあるのは確かです」

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あとから作られた「神話」

 ――建国の時代の信念に根ざしているから、銃の規制は難しい、と?

 「話はそう単純ではありませ…

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