日本製鉄は、買収に成功した米USスチールを通じ、米国に新しい製鉄所を設ける。朝日新聞のインタビューに応じた日鉄の橋本英二会長は、日米連携のもとでUSスチールを米国のトップメーカーに復帰させる意欲を示し、「先端技術で中国の追随を許さない」と話した。
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2028年までに新製鉄所への投資を米国で始める。日鉄による製鉄所の新設は、1971年の大分製鉄所(現在の九州製鉄所大分地区)以来。既存のUSスチールの製鉄所も稼働率を引き上げる。
昨年は米国勢で3位の約1400万トンだったUSスチールの粗鋼生産量を、10年後をめどに3400万トン以上まで高める計画だ。
橋本氏は「先端技術で中国に追いつかれてはいけない。そのためにも生産量の拡大が必要だ」と語った。前回の製鉄所新設を経験した世代は残っておらず、現地に技術者らを送り込んで人材育成を進める考えも示した。
70~90年代に世界一だった日鉄の粗鋼生産量は、2024年時点で世界4位の約4400万トン。傘下に収めたUSスチールや、インドでの合弁事業、タイの拠点をいずれも強化するなどし、10年以内に1億トンの大台まで引き上げる計画。世界2位の欧州アルセロール・ミッタル(約6500万トン)に迫り、首位の中国宝武鋼鉄集団(約1億3千万トン)を追い上げる。
一方、日鉄は世界最大の中国市場では事業を縮小させており、宝武鋼鉄集団傘下の宝山鋼鉄と組んでいた自動車鋼板の合弁解消を昨夏に発表した。米中の分断が経済と安全保障の両面で進むなか、橋本氏は「米国シフト」を加速させている。
橋本氏は「ビジネスは国際的なルールの作り手に寄り添わないと負ける。米中の二者択一をしなければいけない時に、日本が米国につくのは当たり前だ」と話した。