2025年8月30日、カリブ海南部で米軍の軍艦が集結するさなか、パナマ海峡付近でドローンにより撮影された米軍の艦船=ロイター

 米軍は2日、ベネズエラの犯罪組織の麻薬運搬船1隻をカリブ海で攻撃し、11人を殺害した。トランプ米大統領が2日、明らかにした。米国に流入する麻薬が社会問題になるなか、米軍は「麻薬カルテル対策」として軍艦をカリブ海南部に派遣していたが、犯罪組織への軍事力行使は異例。ベネズエラのマドゥロ政権とのさらなる緊張激化が見込まれる。

  • 米、ベネズエラ高まる緊張 トランプ政権がカリブ海に軍艦派遣

 トランプ氏はSNSに、ベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」の船舶を攻撃したと投稿した。この組織がマドゥロ大統領の支配下にあると主張した上で、米軍側の被害はなかったと説明。航行中の船が閃光(せんこう)とともに炎上する様子を映した30秒ほどの動画も添えた。攻撃は「(船が)違法薬物を積み、国際水域を米国に向けて航行中に実施した」という。

 攻撃について、米紙ニューヨーク・タイムズは「伝統的な麻薬対策からみると驚くべき逸脱だ」と報じた。麻薬カルテルに米軍が対処するようトランプ氏が指示した、と伝えた8月の記事では「たとえ犯罪の容疑者だとしても、民間人を軍が殺害すれば『殺人』になり得ることを含め、法的問題を引き起こす」と指摘した。

 ベネズエラのニャニェス通信情報相は2日、動画は人工知能(AI)によって作製されたものだと主張した。

 ニャニェス氏はテレグラムへの投稿で、動画の信憑(しんぴょう)性について、グーグルの生成AIモデル「Gemini(ジェミニ)」で確認したところ、「AIによって作製された可能性が非常に高い」との回答を得たとしている。

 「ルビオ(国務長官)はAI動画をトランプ大統領に『証拠』として渡した」と主張し、「ルビオが戦争をあおり、トランプ氏の手を血で染めようとしている」と批判した。

 米政権は今年、違法薬物を取引する「トレン・デ・アラグア」や別のベネズエラの犯罪組織「太陽のカルテル」を国際テロ組織に指定し、マドゥロ政権がこれらの組織を支援しているとして非難してきた。

 米軍は2日、違法薬物を米国に運搬しているとみなしたベネズエラの船舶1隻をカリブ海で攻撃し、ベネズエラの犯罪組織のメンバー11人を殺害した。トランプ米大統領が2日、明らかにした。米軍は「麻薬カルテル対策」として軍艦をカリブ海南部に派遣しており、ベネズエラとの緊張が高まっていた。今回の船舶攻撃はこの派遣作戦の一環とみられる。

 トランプ氏は、ベネズエラから薬物が「大量に流入している」と述べ「文字通り船を撃ち抜いた」と述べた。米政権は今年、コカインなどの麻薬を取引するベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」や「太陽のカルテル」を国際テロ組織に指定し、ベネズエラのマドゥロ政権がこれらの組織を支援しているとして非難してきた。

 トランプ氏の発言後、ルビオ米国務長官はX(旧ツイッター)で「米軍はカリブ海南部で、ベネズエラから出航した指定麻薬テロ組織の船舶に致命的な打撃を与えた」と述べた。米国防総省高官も取材に対し「麻薬運搬船への精密な攻撃を実施した」事実を認めた。

共有
Exit mobile version