紀伊半島の南部、和歌山県那智勝浦町にある人口300人ほどの色川地区。移住者の夫婦が営む「らくだ舎」は、本屋、喫茶室、図書室、そして、本の出版まで手がける。町内外から集う人の交流の場、情報発信の拠点。この春、ロバも飼い始めた。
らくだ舎を営むのは、北海道出身の千葉智史さん(40)と茨城県出身の貴子さん(39)。2人は、生協のカタログなどを作る東京の編集プロダクションの元同僚だ。
取材で生産者のもとへ足を運ぶことも多く、智史さんは「地に足のついた生活をしたい」との気持ちが強くなった。都会生活への違和感を持っていたこともあり、色川の地域おこし協力隊募集を知って2015年に移住。地域新聞の制作など住民活動の支援をした。
色川は、数十年にわたる移住者受け入れの歴史がある場所。智史さんに会いに通った貴子さんも「ここだ」と感じ、色川に移住して結婚。智史さんが協力隊の任期を終え、18年にらくだ舎をスタートした。
名前は、ラクダが厳しい環境でも生きていけること、そして、智史さんがラクダに似ているから、という。
本棚には、売れ筋ではなく、「自分たちが欲しい本」を並べている。
町の中心部から山道を車で3…