書誌研究を基盤に、近代史やメディア論など広範な分野の執筆活動で知られた評論家の紀田順一郎(きだ・じゅんいちろう、本名佐藤俊〈さとう・たかし〉)さんが、7月15日、致死性不整脈のため死去した。90歳だった。葬儀は近親者で営んだ。
1935年、横浜市生まれ。慶応大経済学部卒。商社勤務の後、60年代から文筆活動をはじめ、「古書街を歩く」「知の職人たち」「日記の虚実」「東京の下層社会」などの著書で博覧強記ぶりを発揮。75年からは、弟子の荒俣宏さんと共に「世界幻想文学大系」(全45巻)の編集を手がけた。
書物への知識を生かした「古本屋探偵の事件簿」などの推理小説も執筆。自身の体験をもとにした「幻想と怪奇の時代」(2007年)で日本推理作家協会賞。06年から12年まで神奈川近代文学館の館長を務めた。