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オンラインでの取材にこたえる曽根博仁さん

 小林製薬(大阪市)の紅麴(こうじ)原料を使用したサプリメントが原因と疑われる健康被害は、会社が問題を把握してから社会に明らかになるまでに2カ月以上の時間がかかりました。政府は健康被害に関する報告の義務化を検討していますが、それに先立ち、今回のような被害情報を集めて対応する新たな仕組みが3月に動き出したところでした。「再発を防ぐためにもこの仕組みについて知ってほしい」と訴える曽根博仁・新潟大教授に聞きました。

 ――健康食品による健康被害の情報を集める制度は、これまでにもあったのですか。

 サプリメントなどのいわゆる健康食品のうち、ダイエット効果がうたわれている「コレウス・フォルスコリー」など四つの成分が含まれる食品をとったあとに被害が生じた場合、業者は都道府県などに直ちに届け出なければなりません。食品衛生法によって義務づけられています。

 紅麴原料を使用した今回のサプリメントは被害の原因物質がまだ特定されていませんが、この四つの成分には該当しないと考えられ、届け出義務の対象にはなりません。

 これ以外の物質に関しては、2002年に厚生労働省の通知として設けられた情報収集の仕組みがありました。ただ、事例をより広く効率的に集め、情報の質を均一にして、健康被害との因果関係を判定できるようにするといった点が不十分でした。

 届け出のあった件数も2020年6月から1年半のあいだに18件と少なく、情報収集機能をもっと強化しようと、厚労省が見直しに取り組んできていました。

 ――新たにできたのはどんな仕組みですか。

 生鮮食品を除いた、いわゆる健康食品による健康被害が疑われた際、消費者や医療関係者、事業者から都道府県などを通して厚労省に報告してもらい、それを集めた全国データベースを国と私たち専門家グループで速やかに検討して公表するなど、被害の拡大を防ぐための対応につなげる、といった内容です。4月から、所管は厚労省から消費者庁に移っています。

「風評被害」の懸念に対応

 ――仕組みづくりには慎重論もあったそうですね。

 業界団体などからは「健康被害と健康食品の因果関係がはっきりしないうちに公表されたら、風評被害につながる」といった声も寄せられました。

 このため、新しい仕組みでは「有害事象はその食品の摂取後に出現または増悪したものか」「医師や歯科医師がその食品摂取との因果関係を疑ったか」などについてチェックするシートをつくり、疑いが一定程度以上あるものだけを報告してもらうようにしています。

写真・図版
健康食品摂取に伴う健康被害について、報告すべきかどうかを判断するためのシート

 また、深刻な被害が認定された場合を除き、専門家グループの検討結果は食品名を明記せずに番号で示すなど、風評被害に極力つながらないよう配慮しています。

 ――その仕組みはいつできた…

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