紛争地を取材するジャーナリストの安田純平さんが国からパスポート発給を拒否された裁判で、一審判決は拒否処分の取り消しを命じた。一方で、同じく戦地取材経験が豊富なジャーナリスト常岡浩介さんによる同様の請求は棄却された。危険地取材は日本では冷ややかな視線を浴びがちで、こうした政府や司法の判断にも疑問の声は少ない。何が原因で、どうあるべきなのか。言論法が専門の山田健太・専修大教授に、背景と処方箋(せん)を聞いた。
- 戦地取材に冷淡になった日本 問われるべきは「なぜ行かないのか」
メディア不信が増幅するジャーナリズムへの無理解
紛争地など危険な場所に赴く記者が批判され、パスポートの返納命令や発給拒否すら当然視される空気を生んでいるのには、三つの要因があると思います。
まず、ジャーナリズム活動に対する社会の理解不足があります。ネットの普及もあり、日本でもメディアリテラシー教育はある程度進みました。しかし、それとセットであるべきジャーナリズム教育は初等中等段階においてほぼ存在せず、高等教育でも限られた大学にとどまっています。
政府や大資本などあらゆる権力から独立し、場合によっては国内法と衝突しても人権や平和といった普遍的価値に仕えるのが報道の倫理です。それゆえ権力監視はメディアの役割の大きな柱ですが、日本では「何でも批判する人たち」とレッテルを貼られ敬遠されてしまっている。
民主社会を下支えする言論報…