川崎市役所本庁舎=2025年1月15日、川崎市川崎区、佐藤英法撮影

 認可保育園や特別養護老人ホームなどを運営してきた社会福祉法人「母子育成会」(川崎市)の巨額流用問題を受け、母子育成会への監査について川崎市が実施した検証の概要が、関係者への取材でわかった。監査では、経営状況について確認して指導するという認識が不足し、特別監査へ切り替えなかったことなどを問題点として指摘する見通しだ。

 母子育成会は昨年記者会見を開き、内部調査の結果、元理事長が2002年以降、約8億5千万円を私的に流用していたことが判明したと発表した。

 川崎市は、監査権限が県から移管された16年度以降、母子育成会の監査をしていたが、こうした不正な会計処理を見抜けなかった。加えて、市の元幹部職員が母子育成会の役員などを務めていたことから、監査への圧力がなかったかなどを検証するため、外部の弁護士や公認会計士、学識経験者を交え、市職員らにヒアリングを重ねてきた。

 関係者によると、市の監査では厚生労働省が策定した「指導監査ガイドライン」の項目のみを確認すると誤って認識し、ガイドラインに経営改善に関する項目がないことから指摘事項とはできないと判断していた。このため、経営状況が危機的だったにもかかわらず、特別監査への切り替えや改善勧告以上の検討には至らなかった点に問題、課題があると指摘する見通しだという。

市有地の無償貸し付け「整理が必要」

 また、22年度に母子育成会が金融機関から借り入れをした際には市の部長が個別に金融機関を訪問していたといい、「市民からの誤解を招く行為」と指摘する方向だ。

 一方、母子育成会の役員などに就任した市の元幹部職員5人は、いずれも退職後に一定期間が過ぎてから再就職しており、ヒアリングの結果、監査について働きかけや指示も「なかった」と回答を得たとしている。

 このほか、法人に複数の市有地を無償で貸し付けていることは、「法令に基づいて適正に手続きされている」との判断に至った。川崎市ではまとまった用地の確保が難しく、無償貸し付けをしてきた経緯があるという。

 ただ、独自に土地を取得している法人との公平性の観点や、他の政令指定都市と比較して無償貸し付けの数が多いことから、現行の運用は「整理する必要がある」と指摘する見通しだ。

 市はこうした内容を報告書にまとめ、3月中旬にも市議会に報告する予定。

社会福祉法人母子育成会の本部などが入っていた建物。事業は別法人に移管しており、解散する方針=2025年2月18日、川崎市川崎区本町、佐藤英法撮影

監査法人「不正の可能性もある」と指摘

 今回判明した川崎市の検証に…

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