過去最低の出生数、その陰に
2024年に生まれた子どもの数(外国人を含む速報値)が72万988人で過去最少となった。人口減少が続くなか、各自治体は競うように子育て支援に力を入れている。だが、岩手県宮古市の最年少市議、佐々木真琴さん(28)は「制度を充実させる前に、地方の女性が抱える生きづらさに目を向けてほしい」と語る。思いを聞いた。
- 2024年に生まれた子ども72万988人、過去最少 9年連続で減
連載「8がけ社会」
少子高齢化はとまらず、2040年には現役世代が今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。人口流出に直面する地方は事態がより深刻です。今回のインタビューでは、その原因ともなっている「ジェンダーバイアス」に着目します。
――地方の女性の生きづらさ、どんなときに感じますか。
日常的に感じます。上の世代の人との飲み会では、まず年齢を聞かれ、二言目には「そろそろ結婚しなきゃ」「そんなに仕事してたら結婚できないよ」「子どもは?」「だから少子化になるんだ」と言われる。最初は軽く受け流していたんですけど、半年ぐらい言われ続けて、「もう無理、ここには住めない」と思いました。自分の中でぷつっと何かが切れてしまった。
結婚や出産は個人の自由ですし、子どもがほしくても、できない人もいる。私も抗がん剤治療をしていて、どうなるかわかりません。軽々しく触れられる度に、心が削られます。
インスタグラムを使い、「地方で女性として生きづらさを感じますか」というアンケートをとりました。昨年6月のことです。私のフォロワー約1700人を対象にしたものなので、偏りはあると思いますが、「感じたことがある」との回答は86%に上りました。
コメントやダイレクトメッセージもたくさんきました。「地元帰るたびに『まだ嫁行ってないの? 仕事ばかりしててもダメだよ』と言われて嫌気がさす」「子ども産んだら『次は2人目』ってしょっちゅう言われる」――。
読みながら、悔しくて、涙が出ました。相手も悪気はないんだと思います。でも、そんなこと男性には言わないですよね。結婚して子どもを育てるのが女性の幸せだという価値観が当たり前になってしまっている。私の問題じゃない、社会の問題だと思いました。
「実家は大好き、でも地元は嫌い」という声も
――若い世代が地方を離れる理由には、そういったジェンダーバイアスもありそうですね。
市の総合計画をつくる会議で「すぐ結婚とか子どもとか言っちゃう地域性を変えなきゃいけない」という話をしたら、笑われました。「あいさつ程度のことでしょ」と軽く考えているのでしょう。やばいと思っていないことが、やばい。
人口流出の話になると、上の世代は「地方には仕事がないから」と言うんですけど、仕事だけじゃない。
実際、私は生まれ育った宮古で仕事がしたくてUターンしてきました。
「地元のために」という気持…