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「tariff(関税)」 挿絵・福田美蘭 現代社会をイメージした作品を毎月掲載します。

■論壇時評 政治学者・谷口将紀

 今月3日の憲法記念日には、例年通り改憲・護憲両派が集会を開いた。近年は9条改正に加え、緊急事態条項創設の是非が主要な争点になっている。ただ、今月の右派論壇誌に改憲特集は見られず、左派誌も「地平」6月号が「軍事費」を特集したにとどまった。

 そのかわり、精神的自由権に関して従来と異なる視角を提示する論考がいくつか登場した。情報法学の成原慧は、憲法学の志田陽子との対談の中で、米国における表現の自由の捉え方について、トランプ大統領やイーロン・マスクが、国家による検閲よりも、ツイッター(現X)やフェイスブックなどのプラットフォーム事業者によるコンテンツ・モデレーション(不適切な投稿の監視・削除)の方を、より深刻な脅威と見なすようになったと指摘している(❶)。

政党への法的規律「やむを得ないのでは……」

 学問の自由に関しては、トランプ政権が各大学に対し、DEI(多様性・公平性・包摂性)政策の撤廃などを要求し、それに応じなかったハーバード大学への補助金を凍結したり、外国人の学生や研究者の締め出しを図ったりと圧力を加えている。ジャーナリストの牧野洋は、第2次世界大戦前のドイツを引き合いに出しながら、学問の自由の侵害が「頭脳流出」を招くおそれがあると警鐘を鳴らす(❷)。

谷口将紀さんによる月1回の「論壇時評」。第2回の今回は、結社や表現の「自由」をめぐって交わされる議論や、トランプ政権が台湾やアフリカ情勢に与える影響まで、国内外の論考10個を取り上げます。

 一方で、倫理学の宮本ゆきは、弾圧に直面する大学が社会的な同情を広く集めていない現状に注目する(❸)。大学へのバッシングを、自由の侵害というよりも既得権・特権階級の凋落(ちょうらく)と捉え、喝采する人が多いというのだ。日本学術会議法案が衆議院を通過した今、背筋に冷たいものが走ったのは筆者だけではないはずだ。

 結社の自由に関しては、政策…

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