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あなたのお金はどこへ

 会社員などであれば、給料から天引きされる所得税や住民税、そして社会保険料……。加えて買い物をすれば消費税の負担もあります。私たちの負担するお金のうち140兆円近くは、社会保障費に充てられています。その8割超を占めるのが年金、医療、介護です。私たちが負担したお金はどう動いているのでしょうか。

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私たちが支払っている税や社会保険料は、どう使われているのか。その行方を追うことで、社会保障の未来を考えます。

年金

 公的年金は、自営業者や無職の人らの「1号」、会社員や公務員らの「2号」、そして2号に扶養されている配偶者が加入する「3号」という三つのグループがあります。

 働き方に応じて、どれに加入するかが変わり、保険料、そして将来受け取れる年金額も変わります。

 1~3号のいずれも一定期間、保険料を納めれば基礎年金が受け取れます。ただ、3号の人は自身で保険料を納める必要はありません。2号に加入していると、支払った保険料に応じて額が増える報酬比例部分(厚生年金)が上乗せされます。

 基礎年金の財源には国のお金も使われています。2023年度は、保険料収入(事業主負担を含む)が41.8兆円、国の負担が12.1兆円。給付費は54.1兆円でした。

 国民年金(1号)の保険料は月額1万7510円(2025年度)です。厚生年金(2号)は月給や賞与の多さに応じて決まる額に18.3%をかけ合わせた金額で、会社と折半します。04年度の年金改革で保険料は段階的に引き上げられたが、17年度から固定化されています。

医療

 公的医療保険は、自営業や無職の人らの「国民健康保険」、中小企業の会社員らの「協会けんぽ」、大企業の会社員らの「健康保険組合」、公務員の「共済組合」などがあります。

 年金と同じように働き方に応じて、どれに加入するかが変わり、保険料も変わります。75歳になると、すべての人が「後期高齢者医療制度」に加入します。

 22年度の平均保険料は、国民健康保険で1世帯あたり年13万6千円。協会けんぽは事業主負担を除き、被保険者1人あたり年20万円。健康保険組合は同23万7千円です。

 公的医療保険でカバーされていない自由診療や健康診断などの費用を除いた「国民医療費」の財源を見ると、22年度は保険料(事業主負担を含む)が23.4兆円、患者の自己負担が5.4兆円、国の負担が11.8兆円、地方負担が5.9兆円でした。

 人口1人あたりの国民医療費は37万円で、20年前の1.5倍に増えています。

介護

 公的介護保険は65歳以上の人の「1号」と40~64歳の人の「2号」に分かれています。

 1号の人は、要介護認定の判定で要支援・要介護の基準にあてはまれば、サービスを利用できます。2号は、末期のがんや認知症など特定の病気で要支援・要介護の状態になった人に限られます。

 1号の保険料は3年に1度、各市区町村が支払いの基準となる額を見直しており、25年度の基準額は平均月6225円。2号の保険料は、25年度の見込み額で1人あたり平均月6202円(事業主負担などを含む)で、00年度の3倍近くになっています。

 介護保険の総費用は24年度予算ベースで14.2兆円。このうち1.0兆円は利用者の自己負担(1~3割)で、残り13.2兆円を国・自治体の負担と保険料で折半しています。

税や社会保険料の負担はかつてより重くなった

 かつてに比べ、世帯収入に占める社会保険料や税金の割合は大きくなっています。その割合は3%の消費税が導入された1989年は20%でしたが、2023年には約25%になりました。世帯収入も増えていますが、この間の物価の伸びを考慮した「実質ベース」でみると、ほとんど伸びていません(注釈を参考)。

日本の賃金は国際的にも伸び悩んでいる

 税や社会保険料といった負担が増えても、それ以上に賃金が増えていたら問題はありません。経済協力開発機構(OECD)によると、1人あたりの平均年収(物価の影響をふくむ実質値)は、1993年は492万円でしたが、2023年は490万円にとどまりました。最近は大企業を中心に賃上げの動きが広がっているものの、物価上昇のペースに追いつかず、実質賃金でみると0.5%減っています。

 世界のほとんどの国はこの間、賃金が大きく伸びました。欧米各国との差が広がるばかりか、韓国にも抜かれてしまいました。

将来推計人口

 税や保険料を多く負担する現役世代は、今後も減り続ける見通しです。医療や介護の担い手の確保も難しくなり、社会保障を取り巻く環境はさらに厳しくなりそうです。

 国立社会保障・人口問題研究所が23年に公表した推計によると、40年の15~64歳の人口は約6213万人。20年の約7509万人から約1300万人(17%)減る計算です。

 一方、20~40年の20年間に65歳以上の高齢者は約3603万人から約3929万人に。介護を必要とする人が急増する85歳以上の人は1.6倍の約1006万人に増えます。

 この推計は将来の出生率を高位、中位、低位の3段階に分けたうちの中位を仮定しています。中位推計では、24年の日本人の出生数は約76万人でしたが、実際は約69万人でした。低位推計の67万人にむしろ近く、将来を担う世代の減少が加速しています。

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