A-stories 8がけ社会 通学異変㊦
全国隅々にまで毛細血管のように張り巡らされていた路線バス網が、都市部でも急速に縮小している。一方、少子化によって学校の統廃合が進み、近くに学校のない地域も広がっている。子どもたちの通学は、大きな変化にさらされている。
国土交通省の交通政策白書によると、一般道を走るバスのうち、代替手段のなくなった「廃止路線」の総延長は2013年度からの10年間で1万3466キロメートルに上る。日本列島の約4倍の長さだが、ここには休止や減便は含まれていない。実態はさらに深刻だ。
路線バスが撤退する主な理由は、以前は人口減少による利用者の減少だった。しかし、この数年は運転手不足が問題になっている。
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帝国データバンクが23年、30路線以上ある民間バス事業者127社に調査したところ、減便や廃止の理由として、ほぼ全ての事業者が運転手不足を挙げた。
国交省の白書によると、30両以上の車両を持つ217の乗り合いバス事業者の87.1%が22年度に赤字。運転手が高齢化する中、処遇改善も進まないことから、募集をかけても集まらない状況に陥っている。
さらに、24年4月から運転手の「働き方改革」も始まった。業務と業務の間の休息時間の延長など、長時間労働を防ぐルールが強化され、人手不足に拍車がかかった。
日本バス協会の試算では、24年の運転手の不足は2万1千人。30年には3万6千人に拡大する見込みだ。
福島大の吉田樹教授(地域交通政策)は「バスの運転手が最も必要な時間帯は、朝の通勤、通学の時間帯。人手不足で朝の運行を削らざるを得ない状況になっている」と説明する。
「過疎地域や中山間地域で顕著だが、ここ1、2年で中核市や県庁所在地、政令指定都市クラスでも問題になっている」
実際、札幌市や千葉市など各地でも路線バスの廃止や大幅減便が相次いでいる。
帝国データバンクの調査でも、ほぼすべての都道府県のバス路線で減便、廃止が実施され、人口密集地の首都圏でも、郊外の路線や早朝、深夜の便を中心に減便や廃止が目立ったという。
こうした動きが今後、都市部の子どもたちの通学にも広く影響してくる恐れがある。
連載「8がけ社会」
これから子どもの数が大きく減るのは、大都市を抱える都道府県です。学校の統廃合が進んだとき、子どもたちの通学手段はあるのか。この記事の後半では現役世代が今の8割になる2040年の「8がけ社会」に向け、通学への影響と解決策を考えます。
通学距離は従来、子どもたちの負担を考慮して、小学校で4キロ以内、中学校では6キロ以内が基準とされていた。
だが、少子化により、学校の…