絶滅の危機に直面しているオランウータンの繁殖をめぐって、千葉県市川市の市川市動植物園が注目されている。地方の公立の園が「最後の砦(とりで)」といわれる理由とは。
春の陽気に包まれた3月10日。市川市動植物園長の水品繁和さん(58)は休園日にもかかわらず、そわそわしていた。
この日はブリーディングローンと呼ばれる繁殖を目的とした貸し借りで、愛知県豊橋市の豊橋総合動植物公園からスマトラオランウータンのメスのウラン(19)がやって来るからだ。ウランは市川市動植物園のオスのイーバン(37)との間で繁殖をめざす。水品さんは「まずは健康で、この動物園に慣れてもらうこと。繁殖は焦らずに」と話した。
オランウータンは生息する森が開発で分断され、絶滅の危機にある。インドネシア・スマトラ島北部に生息するスマトラオランウータンは、国際自然保護連合のレッドリストで最も絶滅に近い「近絶滅種」とされる。
市川市動植物園に注目が集まるのは、国内でスマトラオランウータンの繁殖に成功し、生存しているのは、この15年ではこの園で誕生した2頭だけだからだ。いずれも水品さんが担当飼育員として関わっている。
園には1992年、インドネシアのメダン市からスマトラオランウータンのオスのイーバンとメスのスーミーのつがいが贈られたが、来園した当初は苦労の連続だったという。
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