Smiley face
写真・図版
芝の土田峻太郎主将=2025年7月16日午前9時6分、神宮、石平道典撮影

(16日、第107回全国高校野球選手権東東京大会3回戦、岩倉10―0芝=6回コールド)

 何度も降り注いだ雨。継続試合となっていた岩倉との対戦は、この日もたびたび中断した。それでも芝の主将、土田峻太郎(3年)は「気持ちを切らさず、最後まで戦おう」と声をかけ続けた。

 前日の試合、三回で7点リードされて継続試合に。球威のある岩倉の投手を前に、「自分たちの野球がまったくできなかった」。部員でつくるLINEで「自分たちのプレーをやろう」とメッセージを送った。

 芝は昨夏の3回戦、甲子園で準優勝した関東第一に3―4と迫った。だが、昨秋と今春の都大会は1次予選で敗退。「当たり前などない。全員が一つにならないと勝てない」。1年生の時からベンチ入りし、自ら主将に立候補した土田はそんな思いで、チームをまとめてきた。

 この日、五回表2死一、三塁のチャンスで打順が回ってきた。狙っていた真ん中の直球を打ち返したが、外野フライに。それでも気持ちを切らさず、その裏の守備で途中からマウンドへ。「やってやろうと思って投げた」。併殺に打ちとり、ガッツポーズをした。

 だが、6回コールド負け。その瞬間、「野球を続けてきた12年間がこみあげてきた」。小学1年生で始め、中学でエースに。高校で遊撃手になったが、ピッチャーへの思いはずっとあった。不調を乗り越え、手にした背番号1。最後の夏にマウンドに立つことができた。

 雨の中、相手チームの選手、応援に駆けつけてくれたクラスメート、そして、仲間たちがいた。この光景を、土田は目に焼け付けていた。

 「自分たちの力はすべて出せた」。負けて悔しいけれど、涙は流さない。大学でも野球を続け、必ずまた、神宮に戻ってくるから。=神宮

共有