参加者が編むのはマフラー、帽子、セーターとそれぞれ。「アムアムクラブ」の集まりで、代表の北岡聖子さんは「ここは講習会でなく、安心して過ごせる場所」と話した=京都市中京区

記者コラム 「多事奏論」 くらし報道部記者・長沢美津子

 編み物がブームだ。

 韓国アイドルや五輪のメダリストが火付け役になり、国内外のSNSには自慢の自作や解説動画があふれる。新しいことのようだけれど、糸と針からものを生み出すやり方は、大昔から変わらない。だとしたら、いま、わたしたちは、編み物に何を求めているのだろう。

 興味を持ったきっかけは、2月1日の読書面で紹介した「編むことは力」(ロレッタ・ナポリオーニ著、岩波書店)というエッセーだ。イタリア出身の著者による編み物の社会史で、庶民が自由に編むという行為が権力や消費社会への無言の抵抗になってきたこと、編み手としての女性たちが歴史にどんな役割を果たしていたかを、フェミニズムからの考察を交えて描いている。本を訳したライターでアクティビストの佐久間裕美子さんは、あとがきに自身の体験をつづったうえで、編み物は「癒(いや)しの泉」「人生の同志」だと書いた。

 カフェやワークショップなどかたちはさまざまに、編み物をする「場」が、各地に生まれている。訪ねたのは、大阪を中心に活動する「アムアムクラブ」。この日は京都市内の喫茶店の2階を会場に、集まりを開いていた。輪になって座るなかには男性も交じる。参加者は好きな時間、好きなように編む。

 クラブは発足から3年、代表…

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