刑務所や少年院の出所者を雇い、社会復帰を支える「協力雇用主」の活用が伸び悩んでいる。全国で約2万5千社が登録するが、実際に雇用している会社は4%ほど。働く場は更生に不可欠だが、制度をいかに周知させるかなど課題は多い。
東京都江戸川区の社会福祉法人「江東園」は、これまで30~40代の出所者3人を雇い入れた。役員の杉啓以子(けいこ)さん(77)が保護司で、仮釈放中に担当した男女だった。
介護施設などで清掃や調理を担い、トラブルもなかったという。「出所後に働く場がないと、スマホで悪い仕事を見つけちゃう。仕事を提供することで更生に協力したかった」と話す。
約10年前に協力雇用主に登録したが、制度を活用した雇用は実現していない。理由は「保護観察所が出所者を紹介してくれないから」だという。
協力雇用主とは
刑事施設の出所者や保護観察者などを雇用する意思があるとして、保護観察所に登録した事業主。就労機会の提供だけでなく、社会生活が送れるよう指導や助言をするなど立ち直りを支える役割もある。法務省によると、遅くとも昭和30年代には始まったとみられるという。実際に雇えば国から奨励金が支払われ、会社に損害があれば見舞金を受け取れる。
雇ったことがない協力雇用主、「すれ違い」の理由は
法務省が協力雇用主約600社から回答を得た調査でも、「協力雇用主として雇用したことがない」とした197社に理由を尋ねると、杉さんのように「保護観察所から連絡がない」と答えたのが47%で最多だった。
だが、保護観察所から協力雇用主に対し、出所者を紹介する仕組みはない。制度上、出所者を雇うには、協力雇用主がハローワークの専用ページに求人を出すのが本来の流れだ。
制度と雇用主の「すれ違い」…