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元モンゴル大統領のエルベグドルジ氏=東京都中央区、吉本美奈子撮影
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 モンゴルは1990年代、民主化を成し遂げた。2017年には、死刑の廃止に踏み切る。一連のプロセスの立役者が、ツァヒアギーン・エルベグドルジ元大統領(62)だ。若きリーダーとしてモンゴルを率いたエルベグドルジさんに聞いた。なぜ民主主義に、死刑廃止が必要だったのですか。

無血革命はなぜ成し遂げられたのか

 ――遊牧民の家庭に育ったと聞きました。

 「両親は羊飼いで、私は8人兄弟の末っ子でした。当時、モンゴルは社会主義体制下にあり、自由も私有財産も認められていなかった。両親はただ国家のために働いていたようなものです。生活は厳しかったです」

 〈17世紀に清朝が中国を統一し、モンゴルは支配下に入った。1911年の辛亥(しんがい)革命を機に外モンゴルは独立を宣言。ソ連の後押しもあり、24年にアジア初の社会主義国となった〉

 ――あなたが政治に目覚めたきっかけは何ですか。

 「兵役を経て、奨学金を得ることができ、83年から88年にかけて旧ソ連に留学しました。現在のウクライナにある陸軍の教育機関で、専攻はジャーナリズムです。当時のソ連はとても興味深い時期にありました」

 「最高指導者のゴルバチョフが、ペレストロイカやグラスノスチ(情報公開、言論の自由)を掲げていた。実に多くのことを学ぶことができました。社会主義というシステムの欠点を知り、ポーランドを中心とする『連帯』運動など、各地で様々な変化が起きていることにも気づきました」

 「しかし88年に帰国すると、モンゴルは深い眠りの中にあったのです。この国の社会主義に改革は進んでいませんでした」

 ――そこから、民主化の芽がどう生まれたのですか。

 「何かを変える必要があると考えた若者たちが集まり、地下で民主化運動を始めたのです。最初のデモは89年12月10日でした。私はデモの司会者を務め、運動に身を投じるようになりました。26歳のときです」

 ――その日のデモは、モンゴルの民主化運動の始まりとして記憶されていますね。

 「反政府デモに参加するのは…

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