米国出身の建築家、W・M・ヴォーリズが建物群や配置を設計し、美しさに定評がある関西学院大(兵庫県西宮市)の西宮上ケ原キャンパス。象徴でもある時計台にいまも残る戦時中の影を拭い、歴史に思いをはせるプロジェクトが始まった。
時計台は1929年に完成。97年まで図書館として使われ、現在は大学博物館になっている。
内部の重厚な石造りの階段。手すりには窓のような穴が並ぶ。もともとは23カ所全てに、花のような模様のアイアンワーク(鉄の装飾)が施され、実用性とともに意匠にもこだわるヴォーリズ建築らしさが表れていた。
だが1942年、アイアンワークは取り外されて持ち去られた。前年に始まった太平洋戦争による、軍の物資不足を補うための金属供出だった。
「芝生に連日、山と積み重ねられ……」
同年6月20日の「関西学院新聞」には「私立大学高専に魁(さきが)けて金属類回収運動に万全を期して邁進(まいしん)」の見出しが躍る。
記事によると、文部省(当時…