博物館や美術館を見学すると、「何となく気分が落ち着いた」ような感覚になる――。その効果を「博物館浴」と名付け、科学的な証明をめざす研究が進んでいる。
東京・上野の国立西洋美術館で6月、65歳以上の23人と、20歳代の大学・大学院生18人の計41人が参加する実験があった。展示作品を鑑賞した後、血圧や心理状態などに表れる変化を調べた。
最初は黙って20分鑑賞し、2回目は他人と会話しながら20分鑑賞する。鑑賞前と後の計3回、血圧と脈拍のほか気分や感情の状態を測定する。筆記による心理測定は、「緊張する」「活気がわいてくる」など感情の状態について尋ねた35項目の質問について、自分の状態にあった答えを五つの選択肢から選んだ。
高齢者、学生ともに作品を鑑賞した後は、怒り・疲労・緊張・混乱・抑うつのネガティブな状態を示す数値は下がる傾向にあった。一方、ポジティブな状態を示す活気の数値は双方とも2回目のおしゃべり鑑賞の後は上がった。脈拍の軽減から館内散策は、軽度の有酸素運動になっているという。
参加した東洋大学観光学部の安斎花南(かな)さん(4年)は「好きな絵を見ると気持ちが盛り上がったり穏やかになったりした。マイナスの感情が目に見えて減ったので驚いた」。
千人以上が実験に参加
研究を進めるのは九州産業大…