「詩と翻訳」と題したパネルディスカッション。(右から)ジェフリー・アングルスさん、新井高子さん、柴田元幸さんが朗読を交えて語った。左端は司会を務めた四元康祐さん=東京都新宿区の早稲田大学国際文学館、早稲田大学提供
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 ひとくちに翻訳と言っても、言葉の意味を別の言語に移すという以上の、複雑で多彩な側面がある。東京都内で6月に開かれた「初夏の文芸フェスティバル」は、そんなことを改めて考えさせられる内容だった。

 「翻訳者たちは語る」と題したパネルディスカッションには、韓国文学の翻訳者斎藤真理子さん、チベット文学の海老原志穂さん、自身も作家で日本の小説や漫画をチェコ語に訳しているアンナ・ツィマさんの3人が登壇。翻訳と、その国の社会状況とのかかわりについて語った。

 斎藤さんは、自身の訳で刊行された注目作、ハン・ガン著「別れを告げない」などを紹介しながら、「韓国の文学はポップなものもヘビーなものも常に真剣。その根底に過酷な歴史がある」と話した。個人の実感を掘り下げることから世界を見つめようとするのが日本文学なら、社会や歴史が個人に表れるのが韓国文学だという。

 海老原さんが語るチベット文…

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