福岡市の住宅街にたたずむ築100年を超える一軒家。木のぬくもりに満ちた居間に、十数人の認知症のお年寄りたちが集う。
高齢者介護施設「宅老所よりあい」。昨年亡くなった詩人の谷川俊太郎さんがかつて、「僕、最後はよりあいに行くから」と言っていた場所だ。笑いの絶えないよりあいで、谷川さんは老いと介護を見つめ直した。
1991年によりあいを始めた下村恵美子さん(72)は今から30年ほど前、静岡で開催された介護に関するセミナーに参加した。プログラムの一つに、谷川さんが登壇するシンポジウムがあった。
詩に興味のなかった下村さんにとって、谷川さんは「教科書に載っていた人」。だが、ファンだった同行者と一緒に行くと、谷川さんが朗読した詩が心に刺さった。
- 【連載】谷川俊太郎 どこからか言葉が
「母を売りに」
母を背負って、市場に売りに…