昨秋、社長になって初めて直営店をオープン。「約束を果たせた」と話す糸井さん=前橋市の旅がらす本舗清月堂前橋国領町店

 70年の人生を、二つの「顔」で歩んできた。一つは創業約100年になる老舗菓子店の経営者。そして、もう一つは警察官だ。群馬銘菓で知られる「旅がらす本舗清月堂」の社長・糸井義一さん(73)は、元群馬県警刑事部長だ。

 群馬県高崎市の本社・工場に出勤すると、白い作業着に着替える。商品の大半は機械で作られるが、その日の気温や湿度などによって微妙に食感、味が変わる。「ちょっと硬いかな」。だから従業員たちと会話しながら調整していく。大事にしているのは「現場第一主義」。それは警察で学んだ。

 前橋市出身。高校卒業後、「柔道を続けたかった」と警察官を選んだ。常に意識したのは現場の大切さ。富岡署刑事課長時代、捜査員から情報が上がってくると現場に足を運んだ。高崎署長として感謝状などを贈呈する際も、署長室から飛び出し、なるべく相手先に出向いた。

 「その場に行かないと分から…

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