連載「HANABI」第8部 未来へ紡いでいく(4)
「大曲の花火」を語るとき、新山虎之助(1915~2003年)を抜きにはできない。大曲で初めての「現代の名工」になったカリスマ花火師である。
秋田県大仙市の花火会社「響屋大曲煙火」の新山良洋(53)は、祖父虎之助が放つ強烈な光にあこがれ、また、その影に悩まされた。
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新山家は1894(明治27)年に創業した初代竹松に始まる。2代目岩五郎の長男に生まれたのが虎之助だった。
良洋によると、岩五郎と不仲だった虎之助は実家を出て「職業軍人」になる。火薬の取り扱いに慣れていたのか、大砲の担当になったという。
1936(昭和11)年ごろ、岩五郎が配属先の青森・弘前を慰問した。小遣いを渡そうとすると、虎之助は「いいよ。金と酒とには困らない」と言って返した。息子の姿に岩五郎はたいそう喜んだという。
「花火の神様」との出会い
ところが、岩五郎は間もなく…