両親と手をつなぐ子ども=ロイター
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デイビッド・フレンチ

 「お父さん、これは私の年では無理だと思う」

 娘の言葉は聞くのもつらかった。それは、彼女の人生で最も悪い知らせを受け取ったときの絶望の言葉だった。おなかの中にいる赤ちゃんが、命に関わる障害を持っているというのだ。赤ちゃんの名前はライラ。胃壁破裂と診断され、腸が体外で形成されている危険な状態だという。正常な腎臓は片方だけで、体が非常に小さいことから、致命的な遺伝子異常があるかもしれないことがうかがわれた。

 娘のカミールは実に21歳という若さだった。大学生のときに高校時代の恋人と結婚し、大学の最上級生のときに身ごもった。米国では今や結婚や出産がかつてないほど高齢化している。そんな時代に、これは珍しいケースだろう。ただ、まわりと比べて若くに結婚することは、カミールらしかった。彼女もその夫も心は大人びていて、実年齢よりも成熟していた。だが、この時は事情が違った。ライラについての知らせは恐ろしいもので、現に押しつぶされそうだった。

励ましよりも共感が必要なとき

 どう返事をすればいいのか…

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