まちづくり会社「御祓川」社長の森山奈美さん=2025年5月7日午後0時41分、石川県七尾市生駒町、上田真由美撮影

 能登半島地震からの復興に向け、人や情報をつなぐ「ハブ」のような存在として、いたるところで耳にする名前がある。森山奈美さん(52)。石川県七尾市のまちづくり会社「御祓川(みそぎがわ)」の社長で、能登の内外の人を結びつけ、伴走している。

 「のと発酵的復興会議」という交流イベントが2月、のと里山空港(輪島市)で開かれた。酒やみそ、魚醬(ぎょしょう)の「いしる」「いしり」など能登の多様な発酵食品とかけつつ、既存のものが分解されて変質し、混ざり合って豊かなものが生まれていくという希望が込められた名前。イベントを企画し、全国から集った100人余りを前に「復興には長い年月がかかります。でも一つひとつの小さな取り組みの積み重ねが、能登の未来をつくっていく」と語りかけたのが、森山さんだった。

  • 混ざり合い、刺激し合い「発酵的復興」を 能登空港で語り合う8時間
森山奈美さん(右)は2月、のと里山空港で「発酵的復興会議」を開き、能登の内外の人たちの交流を促した=2025年2月15日午後1時31分、石川県輪島市三井町洲衛、上田真由美撮影

 七尾市で生まれ育った森山さんは、都市計画コンサルタント会社の研究員を経て、七尾の中心市街地を流れる川の名前のまちづくり会社「御祓川」の設立に携わり、2007年に社長に就いた。その年に起きた前回の能登半島地震をきっかけに、会社を七尾のまちづくりに限らず、能登の内外や官民をつなげ、調整を担う中間支援組織に育てていた。

翌晩から始めた情報共有会議

 昨年の元日、能登半島地震が起きると、森山さんは弟が経営する同市内の自動車学校に身を寄せ、自動車学校の寮を「避難所」として開放した。布団をかき集めたり100人ほどの避難者名簿をつくったりとその運営にあたりながら、周辺の被災状況を見て回った。

 翌1月2日の夜からは、能登の内外にいるまちづくりの仲間たちとオンラインで情報共有会議を始めた。「元々、能登でがんばる人と地域の外の人たちをつなぐコーディネーターを育てようとしていたので、この地域の情報ならこの人に聞けばわかる、というつながりがありました」。毎晩の会議で互いの情報を集約し、支援物資の受け入れ・配布拠点をつくったり、自主避難所も含めた「孤立リスト」をつくったり、給油できるガソリンスタンドや使えるトイレの情報を集めてネット上で公表したりした。

 このミーティングを発展させ…

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