能登半島地震と豪雨による二重の被害を受けた被災地で、初の臨時災害放送局が6月にも開局する。地域の細やかな生活情報に加え、地元を離れた人に復興状況を伝えるのが狙いで、スタッフの中には特別な思いを胸に参加した若者がいる。
「生まれも育ちも町野町です。農家の育ちですが、会社員をしています」。5月17日、ユーチューブのライブ配信でパーソナリティーの一人、中山真(しん)さん(29)の明るい声が響いた。
番組は「まちのラジオ実習放送」。昨年元日の地震と9月の豪雨で二重被災した石川県輪島市町野町で、開局をめざしている災害FM「まちのラジオ」の研修の一環だ。
中山さんは地震で自宅が全壊。富山県などへの2次避難を経て、町野町にできた仮設住宅に入れたのは6月だった。新たな仕事を見つけ、生活を軌道に乗せようとしていた矢先、9月の豪雨で姉の美紀さんを失った。美紀さんは仕事から帰宅中、車を残して行方不明になり、1カ月後、遺体で見つかった。31歳だった。
「太陽みたい」という表現がぴったりで、いつも明るく家族の中心にいた姉。中山さんは「好きなことができなくなった姉の分も俺がやりたいことをやろう」と心に決めた。その「やりたいこと」は突然見つかった。
「ラジオに出たそう」 問われて即答
今年2月、地元有志のグループ「町野復興プロジェクト実行委員会(町プロ)」が災害FMの開局をめざし、役場支所で1日限りの実験的な公開生放送をした。スタジオに足を運んだ中山さんは、身近な人との会話のように盛り上がるラジオの熱気に圧倒される。
5時間の放送後、中山さんの…