能登半島地震で傷ついた夏祭りを受け継ぐ。そんな思いのこもった黒島天領祭が17、18日、石川県輪島市で開かれる。住民たちとともに力を尽くすのは、祭りが息づく土地を「第二のふるさと」と語る人たちだ。
天領祭が開かれるのは、江戸時代に北前船の寄港地として栄えた輪島市門前町黒島地区。毎夏、曳山(ひきやま)2基とみこしが、太鼓や笛の音とともに練り歩いてきた。
だが、約280年前に造られたみこしは昨年元日の地震で建物の下敷きになって粉々に。昨夏はみこし不在の祭りとなったが、今年は巡行に姿を見せる。無償で修復したのが、兵庫県姫路市の宮大工、福田喜次さん(73)。姫路の「灘のけんか祭り」のみこしも手がける「現代の名工」だ。
地区で支援活動をする同市のボランティア団体から依頼され、昨春に黒島を訪れた。若宮八幡神社の氏子総代長の林賢一さん(77)から「みこしが元の姿に戻るのは難しいだろう。祭りは4、5年できないかもしれない」と言われ、職人魂に火がついた。「祭り文化を途切れさせないために、新品のみこしでは意味がない。バラバラになった部材を組み直そう」と思った。
昨年6月に再訪し、散らばった部材の破片を地をはうようにしてかき集め、姫路に持ち帰った。小さな部材は2センチ角で、大小合わせて千個以上もあった。
みこしの詳しい図面はない。在りし日のみこしを知るため、「見たこともなかった」というYouTubeで天領祭の動画を探し、何度も見返した。足りない部材は自作してはめ込み、ひびが入った練り棒はボルトを入れて補強した。
その仕事の細かさと難しさを…