能登半島地震は、古文書や美術品、古民家などの文化財にも大きな被害をもたらした。奥能登を中心に、そんな被災文化財の救援活動をまとめるのが、国立文化財機構の文化財防災センター(本部・奈良市)だ。司令塔の高妻洋成センター長(61)の原点には、13年前の東日本大震災での経験があった。
自ら現地でレスキュー活動
――能登での活動状況は。
地震発生の10分後に現地に連絡をとりました。私自身が最初に現地に入ったのは2月。石川県輪島市にも行きました。倒壊した家屋が多く、惨憺(さんたん)たる状況です。現地の担当者には「文化財の被害状況の調査には何カ月かかるか分からない」と言われました。
被災文化財の救援は、古文書や美術品などを対象とした「文化財レスキュー」と、建造物の復旧を支援する「文化財ドクター派遣」があります。その現地本部を2月、石川県庁(金沢市)に設置しました。より効率よく作業を進めるため、3月に奥能登にも現地本部を設け、金沢と奥能登に計4人の駐在員を常時置いて活動しています。
救援前の現地調査や実際の救援活動には、県内の博物館などの施設や「歴史資料保全ネットワーク」、全国の各団体のみなさんから協力をいただいています。
――3月末は自ら活動しました。
東日本大震災で文化財レスキューを経験した一人として、現地で何ができるかを示す役割だと思っています。今回は倒壊の恐れがある古民家の土蔵から、江戸時代以降の大量の古文書をはじめ、多くの資料を搬出しました。
救出した古文書や仏像などを保管するための場所も、県や市町の教育委員会によってすでに確保されています。
――本来は、文化財を科学的に保存する方法を研究する「保存科学」の専門家です。
保存科学の専門家でもある高妻さん。2007年の高松塚古墳の石室解体に携わり、4年後の東日本大震災が大きな転機となります。
この道に進むきっかけは、京…