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「まちのラジオ」のロゴを載せたチラシを持つ山下祐介さん(右)。ロゴは吉崎観音さんがつくった=2025年7月1日午後0時23分、石川県輪島市町野町、上田真由美撮影

 能登半島地震の被災地で初の臨時災害放送局(災害FM)「まちのラジオ」が7日、開局した。石川県輪島市町野町の住民による、住民のためのラジオ。更地に立つスタジオのコンテナや町中に張られているポスターには、人気漫画「ケロロ軍曹」の作者、吉崎観音(みね)さんが手掛けたカラフルなロゴマークが輝いている。

 ロゴは「まちのラジオ」と周波数の「88.2MHz」の文字を青、水色、緑、赤、オレンジの色彩でカラフルに描いた。4匹のネコに加えて、カエルのような姿の「ケロロ軍曹」もウィンクしながらちゃっかり顔を出す。

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吉崎観音さんがつくった「まちのラジオ」のロゴマーク=まちのラジオ提供

 「ケロロ軍曹」は、地球征服のために宇宙からやってきたケロロ軍曹が、潜入した家の子どもたちにあっさり捕獲されて居候することになり、部下たちとともに様々な騒動を巻き起こす物語。1999年に連載が始まり、今も「月刊少年エース」(KADOKAWA)で連載中でアニメ化もされているヒット作。

 吉崎さんは朝日新聞の書面インタビューに対して、「明るく楽しい雰囲気をイメージしました」と説明した。

 「海と空と雲と能登の色。ツールでまっすぐな線や綺麗(きれい)な円も引けるのですが、復興も人の手によって進んでいくものですから、ロゴも手描きでまとめたいと思いました」

 偶然にも今月、「ケロロ軍曹」の16年ぶりの劇場版新作が来夏に公開されることが発表され、話題を集めたばかり。そんな人気の漫画家が能登のラジオのためにオリジナルのロゴを描いて贈ったのには、ずっと前からの縁があった。

 災害FMは災害発生時、自治体などが臨時で開設するラジオ局。これまでに55局、開設された。そのうち、2011年の東日本大震災の際、宮城県女川町で5年間、放送を続けた「女川さいがいFM」が、今回、能登で開局を目指す「まちのラジオ」を全面的にバックアップしてきた。実践的な研修でノウハウの伝授や、資金集めにも駆け回り、使っていた機材も提供した。

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 インターネット同時放送で女川FMのリスナーだった吉崎さんは、女川町のスタジオを訪ねて絵を描いたり寄付をしたり、さらには女川FMのロゴマークもつくるなど交流を続けた。その縁で、まちのラジオも応援することになったという。

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吉崎観音さんがつくった「まちのラジオ」のロゴを載せたポスターはスタジオとなるコンテナの外壁にも張られている=2025年7月1日午後0時6分、石川県輪島市町野町、上田真由美撮影

 吉崎さんはこれまで能登を訪れたことはないが、震災前から千里浜なぎさドライブウェー、能登島大橋、見附島など能登半島の名所を訪れたいと思っていたと明かした。 質問の最後に、まちのラジオがどんな存在になるといいと思うかを尋ねると、こうコメントを寄せてくれた。

 「誰にも全体のことはわからないし、テレビではリアルタイムに細かいところまで伝えきれない。小さなことや何気(なにげ)ないことも知ることができる、いつでもどこでも『町の声』が聞ける。ささやかな復興のお供のようなものになるといいな、と思います」

 「まちのラジオ」は毎週平日の正午から1時間半の生放送をし、それ以外の時間は再放送や音楽などを流す形で24時間終日、放送を予定。電波が届くのは町野町を中心とした輪島市東部だが、インターネットでも同時配信する。

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