「能登の絆あふれる駅弁」――。仙台市の藤崎百貨店本館で16日から始まる駅弁の販売会で、能登半島地震の被災地の駅弁「能登のかきめし」が店頭に並ぶ。提案したのは、東日本大震災の経験を原点に復興支援に取り組む57歳のバイヤーだ。
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「私にできることは限られているが、何かしないといけない」。藤崎マーケティング統括部で物産展などを担当するバイヤーの松岡達哉さんは、昨年1月1日の能登半島地震でそう思ったという。
北陸地方を担当していたこともあり、発生直後はメールや電話で関係者の安否確認に追われた。
1カ月後の駅弁大会で被災地を走る「のと鉄道」(七尾―穴水)への募金を集め、5月に現地を訪れて届けた。その際、翌年の駅弁大会に出す駅弁づくりを提案。すると、地震前に能登中島駅(石川県七尾市)で駅弁を販売していた井田幸長さん(52)を紹介された。
松岡さんは旧知の駅弁関係者らとともに井田さんにメニューを相談。特産の能登かきを中心に、駅のある旧中島町の伝統野菜の中島菜(なかじまな)や、石川県特産のサツマイモ・五郎島金時を盛り込んだ駅弁が完成した。松岡さんの知り合いの縁で、カキの仕入れ値を抑えられ、2千円を切った1850円(税込み)で販売できることになった。
松岡さんが被災地や地域の復興に強い関心があるのは、自身の被災経験が影響している。2011年3月11日の東日本大震災。記憶は今でも鮮明だ。
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