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脊髄(せきずい)損傷に対するiPS細胞を使った臨床研究について説明する慶応大の中村雅也教授(右)と、岡野栄之教授=2025年3月21日、横浜市、野口憲太撮影

 脊髄(せきずい)損傷による体のまひを治すために、iPS細胞からつくった未熟な神経細胞を患者に移植する臨床研究に取り組む慶応大などの研究チームが21日、移植を受けた4人のうち2人で一部の運動機能が回復したとする結果を発表した。チームは「有効性を持つ可能性が示唆された」とし、慶応大発ベンチャー「ケイファーマ」が、より多くの患者を対象に安全性や有効性を検証する治験を実施する予定だという。

 脊髄は脳と体の各部をつなぐ神経の束。交通事故などで圧迫され損傷すると、脳からの信号が体に届かなくなり、運動や感覚の機能がまひする障害が出る。毎年6千人が新たに診断され、国内には10万人以上の患者がいるとされる。リハビリ以外に確立した治療はない。

 研究チームの岡野栄之・慶応大教授(生理学)らは、京都大の山中伸弥教授が2006年にマウスでiPS細胞の作製を初めて発表した直後から、iPS細胞を使って脊髄損傷を治す研究を本格化させた。脊髄損傷ではiPS細胞を神経のもとになる細胞に変えて移植する手法は世界初の試みで、21年12月に1人目の患者に移植し、注目を集めてきた。

 今回の臨床研究は、脊髄が損…

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