大阪地裁・高裁が入る庁舎=大阪市北区
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 映画の脚本を同意なく書き換えられたとして、脚本家の女性が「共同脚本家」の荒井晴彦氏に110万円の賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(武宮英子裁判長)は30日、荒井氏に5万5千円の賠償を命じた。著作者が意に反する改変を拒める「同一性保持権」の侵害を認めた。

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 映画は俳優・東出昌大さん主演で2022年に公開された「天上の花」。今作がデビュー作だった原告と荒井氏が共同脚本家となっている。

 判決によると、原告は13年から荒井氏の指導を受け、今作の第8稿を執筆した。荒井氏の仲介で映画化が決まり、原告は21年8月、荒井氏の修正指示に従って第10稿を書き上げた。その後、荒井氏は「大分直したよ」と原告にメールをして第11稿を送付。原告の指摘は反映されたが、さらに直した第12稿が完成稿となって撮影が進んだ。

 判決は、第10稿が原告の「著作物」と認めた上で、以降の改稿は単純な字句の修正にとどまらず、登場人物の性格などに荒井氏のニュアンスを加えるもので、「著作者の人格的利益を害する」改変と指摘した。「包括的な同意を得ていた」という荒井氏の主張は、「証拠がない」と退け、同一性保持権の侵害を認めた。

 原告は「DV(家庭内暴力)を正当化する改変」で名誉が傷つけられたとも訴えたが、判決は「SNSで女性を殴る加害者に同情的だと非難するコメントがある」としつつ「映画には肯定的な評価もある」と判断し、意に反する改変をした部分に限って賠償を認めた。

 原告は制作会社と配給会社にも賠償を求めていたが、両社との間では今月8日、両社が謝罪することなどで和解が成立している。(大滝哲彰)

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