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演奏する明浄学院=2024年8月10日、大阪府堺市、河原田慎一撮影
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 「うーん」

 そううなってから、こう言う。

 「何のために『輝宮夜(かぐや)』やってるか、分からへん」

 明浄学院高校(大阪)吹奏楽部の練習で、総監督の小野川昭博さん(62)と、部員たちの問答が始まった。

 「思いつく言葉とか、ある?」

 小野川さんから問いかけられたのは、フルートの蔭本響月(ひびき)さん(3年)。コンクールで演奏する自由曲「白磁の月の輝宮夜」で冒頭のソロを吹く。

 蔭本さんが答える。

 「かぐや姫の伝説なので、竹が光って誕生する場面を表していると思います」

 小野川さんが重ねる。

 「なるほど、誕生するところなんや。ほな、その次は?」

 「天からの『育てなさい』というメッセージ」

 「物語もいいけど、どんな感じで演奏する?」 「この世には存在しない生まれ方なので、緊張感が漂う不思議なイメージ」

 しばらくやりとりをした後、小野川さんは今度は、合奏をしていた木管セクションの部員みんなに向けて話し始めた。

 「こんな音が吹きたい、という思いや考えがないと、面白くない。生きた音を吹かないと伝わらない。もっとメッセージを伝えんとあかんで」

関西大会も高水準、めざすはその先の頂

 全日本吹奏楽コンクールに17回出場している部をまとめる小野川さんには、一つのセオリーがある。

 生きた音とは、たっぷりと息…

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