がんの治療では、見た目(アピアランス)に変化が生じることがあります。抗がん剤治療などに伴う脱毛に直面し、どのように対処したらいいのか戸惑う人も少なくありません。そうした不安や苦痛をやわらげる「アピアランスケア」の重要性が高まっています。(松本千聖)
- がん治療で脱毛、役者として抱えた葛藤 西丸優子さんが選んだ丸刈り
「こんなに一気に抜けるんだな」
膵臓(すいぞう)がんと診断され、抗がん剤治療を始めた東京都の男性(72)は昨年11月、自身の脱毛に落胆した。
普段からおしゃれに気を使い、美容室には2カ月に1度は通っていた。ふさふさの黒髪で実年齢より若く見られるのが誇らしかった。脱毛により自身の見た目が変わるのは「プライドが許さなかった」。
脱毛が進むと、見た目が気になって趣味のサークルは退会した。ゴミ出しなど小さな用事でも家を出なくなり、妻(66)は「このままでは引きこもってしまう」と心配した。
このままではいけない、と夫婦で調べてみたが、男性患者の見た目の変化に関する情報は少なかった。ウィッグを購入しようといくつか試着したものの、気に入ったのは58万円の製品。高額で買うべきか悩んだ。
そんな時、通院先の国立がん研究センター中央病院(東京都)で、見た目の変化に悩む患者をサポートしている「アピアランス支援センター」に相談した。すると、ウィッグのレンタルを提案された。安価で借りることができる、気に入った髪形のものが見つかった。「いざというときはこれをかぶればいいという安心感が生まれた」
思い切って、毛が抜けたあり…