昨年10月の脱線事故から全線運休が続いているいすみ鉄道(千葉県大多喜町)は2日、通学利用者の多い東側の大原(いすみ市)―大多喜(大多喜町)について、2027年秋までの再開を目指すと発表した。今後の復旧費用は約14億5千万円を見込んでおり、県やいすみ市など関係市町に支援を要請した。
同社の古竹孝一社長らが町内で記者会見して明らかにした。先行的に開通を目指す東側は、約27キロの全線のうち約16キロにあたり、乗客数の7割を占める。西側の大多喜―上総中野(大多喜町)間の再開については、今後、復旧に要する費用や期間の調査をするとして、「関係自治体と話さないと前に進まない」と述べるにとどめた。
会見に先立ち開かれた取締役会で県や関係市町に方針を示し、異論は出なかったという。
復旧までの間、代行バスの運行を継続する。復旧費用のうち工事・修繕費用が約10億円を占め、代行バスの費用は約4億5千万円。工事では、東側の枕木2万2千本のうち2700本を交換するという。
事故があったのは昨年10月4日。乗客104人にけがはなかった。脱線は枕木の腐食が一因とされ、事故後に全線を点検したところ、他にも修繕が必要な箇所が見つかった。
再開まで時間がかかる理由について、同社は脱線事故の再発防止に万全を期すため、線路などの整備を進める必要があり、工事に必要な資材の調達に時間がかかると説明している。今年に入って外部コンサルタントにも委託した。古竹社長は「(運休が)3年間というのは本当に長いと感じている。我々としても少しでも短くできるように努力したい」と話した。
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大原―上総中野間では代行バスが計31便運行されている。この日、今後の復旧計画の見通しが示されたが、利用者には引き続き不便な状態が続く。
「ダイヤは高校生中心に組まれているので不便。鉄道が全線開通しないと意味がない」
代行バスは行き先によっては、中間地点の大多喜で乗り継がなければならない時間帯も。週3回、バスを利用する磯野邦彦さん(83)は「乗り換えに40分を要することも。待てないので下車して歩くが、雨の日は3千円かけてタクシーを利用する」とこぼす。
御宿町から外房線・大原駅経由で大多喜高校に通う1年の君塚穂嵩さん(16)は、復旧が3年生の秋になると聞き、「今年中には再開すると思っていた。バスの乗り換えが朝は30分待ち、夕方はぎりぎりで、たまに外房線に間に合わない。時間が正確な電車の方がいい」と落胆した様子だった。
いすみ市の太田洋市長は、復旧期間が長期になることについて「少しがっかりしたが、観光のみでなく地域の人々の大切な足。失えば二度と再開できない。しっかり連携して支えていきたい」。早期復旧に向けて、今年2月の補正予算で施設の維持・修繕費として1億円を計上した千葉県の熊谷俊人知事は「一日も早く安全・安心な鉄道として復旧することが重要であると考えており、経費に対する支援については、今後、関係市町としっかりと連携して対応を検討していく」とのコメントを出した。