Smiley face
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崖から飛び降りるめんぼうズ。その顔はよく見ると笑っているのかも
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 人みな寝静まる深夜、洗面所では「ぴょんこ、ぴょんこ、ぴょんこ」と、何やら怪しげな動きが……。脱走しためんぼうの群れが集団入水する衝撃的な絵本、「めんぼうズ」。「夏になると怖い絵本の棚に陳列されがちだけど、本当はファンタジー」と話す作者のかねこまきさんは、めんぼうにリアルな顔を彫刻した立体作品も作るアーティスト肌。取るに足らないめんぼうという存在に、心を寄せるわけを聞きました。

原理は不明だけど、起こっている

 この本を描いた当時、マイナーなものを主人公に絵本を作りたいと考えていました。マッチとかつまようじとか、いろいろ探す中で、めんぼうに目が留まったんです。

 「めんぼうズ」とは、めんぼうの複数形と、海坊主などの「坊主」を掛け合わせた言葉です。家々から逃げ出しためんぼうズが崖から池に飛び込む場面があるのですが、着想源のひとつは、レミングというネズミが集団自殺するという俗説。ほかにハーメルンの笛吹き男のイメージや、映画「風の谷のナウシカ」の、大量の蟲(むし)が襲ってくるシーンからの影響もあります。めんぼうズは無表情だから、不気味ですよね。

「めんぼうズ」

 アリス館、2021年、発行部数7500部。満月の夜、寝静まった家々の洗面所から脱走しためんぼうズ。お行儀よく列をなし、綿が毛羽立つのも構わず「しぱぱぱぱぱぱぱ」と疾走する白い大群が、一目散にめざすは池。水に飛び込んだめんぼうズは、夜明けとともに新たな姿に変身します。

 めんぼうズがなんでこんなことをするのかは、作者の私にもわからない。原理原則は不明だけど、現象として起こっている、という感じです。

 水に沈んでほぐれためんぼうズはまとまって一体の「坊主」になり、乾いて膨らんで、最後は空に飛んでいって雲に擬態します。軸はどうしたかって? 内包されてるんです。体をひねって水気を絞っている場面をよく見ると、細い軸がツンツン刺さっているのがわかりますよ。

 30歳で専業主婦になったの…

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