劇作家・演出家の藤田貴大

 「マームとジプシー」の新作「Curtain Call」が上演される。「自分のいいところも悪いところも全部演劇で作られてきた」と語る劇作家・演出家の藤田貴大が、40歳の節目に「演劇」そのものをテーマにした作品だ。

 描かれるのは、劇場の裏側、開演までの数時間。5人の出演者が、俳優から演出助手、照明オペレーターに弁当業者までそれぞれ数役を演じ分ける。

 昨年は自伝的な要素に演劇論を交えた長編小説「T/S」を刊行。そして今回、舞台で初めて「演劇」を真正面から扱う。

 「自分の人生を振り返ると、演劇しかしてこなかった」と言う。10歳で地元・北海道伊達市の市民劇団で俳優として初舞台。高校演劇に打ち込み、桜美林大学在学中に劇作と演出に専念して「マームとジプシー」を立ち上げた。「台本を通じて、人が何を考えているか知った」。演劇はアイデンティティーと深く絡み合っている。

 30代後半に、コロナ禍が重なった。演劇は「不要不急」とされた。「衣食住に関わる仕事と同じような営みとしてやってきたから、ショックだった。公演1回を成立させるために色々なことをやっている。それが伝わってないのかな、とここ数年感じていたんです」

 ようやく以前に近い状況になったとき、「タイムスリップ」したような感覚があった。でも、確かに月日は経っていた。

 4月生まれの藤田は、開幕前…

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