立命館大学院理工学研究科の服部太政さん=草津市のびわこ・くさつキャンパス
  • 写真・図版

 新年度がスタートしました。進学や就職をして欠かせないのが自己紹介です。言葉に詰まって滑らかに話せない「吃音(きつおん)」の症状がある大学院生には伝えたいことがあります。

 立命館大学院修士2年の服部太政さん(23)は小学生のとき、特に苦労したのが国語の音読の時間だった。小5の授業で自分の順番だけ飛ばされた。「ショックだった。苦手だけど、読みたくないわけではない。特別扱いじゃなくみんなと同じようにしたい」。でも、班単位の発表の日は、同級生に迷惑をかけないため学校を休んだりした。

 成長して言える言葉は増えてきたが、今でも、た行は苦手だ。「例えば」なら「例として」や「具体的に」のように、言いにくい言葉は言い換える工夫をしながら会話している。それでもどうしても避けられない言葉がある。自分の名前だ。「たいせい」は変えられない。

 中学生になって硬式野球のチームに所属した。試合前に選手全員が名前と生年月日を申告するルールがあった。言えずにいると、チームメートから笑われ、監督からは「自分の名前を言えないようじゃだめだ。練習してきなさい」と言われた。

 同級生に症状を伝えたが、「たたたたいせい」とまねをされて呼ばれるなど、からかいはやまなかった。小4から続けていた野球をやめた。

 「治そう」とネットで見つけたトレーニング本を買い、家族が寝静まってからすがる思いで練習した。でも効果はなかった。「ここまで練習したんだから、うまく付き合っていくしかない」。そう考えた。

 高校1年生の4月。初めて同級生にカミングアウトした。小中学校では、先生には伝えていたが、同級生には言えなかった。隠そう隠そうとしてきた。

同級生の前に立って

 進学した高校の同級生は、ほ…

共有
Exit mobile version