自民党本部=東京都千代田区、諫山卓弥撮影

 衆院解散・総選挙の足音が高まっている。10月1日召集の臨時国会で選出された新首相は、国民の信をすぐに問うべきだ――。自民党総裁選で選ばれた新総裁に向けて、「早期解散」を求める党内の声がやまない。

 その思惑は、3年前の再現。明快であり、露骨でもある。

 「国民から信任をいただいて、国政を担っていく必要がある」

 2021年10月4日。新首相に選出されたばかりの岸田文雄氏は記者会見で、10日後に衆院を解散し、半月後に公示、同月末に投開票とする方針を明らかにした。

 衆院議員の任期満了が迫るなか、菅義偉内閣の支持率が低迷。菅氏は総裁選直前に不出馬を表明し、総裁選に勝利した岸田氏が「選挙の顔」に選ばれた。

 衆院選を経ずに政権が代わる「疑似政権交代」の効果は、すぐに表れた。岸田氏就任直後に行った朝日新聞社の世論調査では、内閣支持率が菅内閣の30%から岸田内閣で45%に上昇した。

 岸田氏の所信表明演説の後、各党との代表質問を終えると衆院を解散。解散から投開票までの日数は戦後最短の17日間。与党は勝利した。

 3年後、再び総裁が交代する自民党内でいま浮上している日程は酷似している。10月4日の所信表明演説の後、7~9日に代表質問を行い、衆院を解散。衆院選は15日公示、27日投開票というのが最短コースとして想定されている。

 今回、岸田氏が総裁選不出馬を決めた理由は衆院選での勝利が見通せなかったことが大きい。後継総裁となる後任の新首相も、3年前と同じ理屈で衆院解散に踏み切るのかもしれない。総選挙を経ずに首相が交代した以上、有権者の判断を問いたい、と。一見、もっともらしい理屈だが、私は素直にはうなずけない。

 いまの選挙制度になってから…

共有
Exit mobile version