障害を理由に中学校に私服での登校を求めたが認められず不登校になり、教育を受ける権利を違法に侵害されたとして、岡山県矢掛町立矢掛中学校の生徒だった女性(19)が町を相手取って慰謝料など330万円の賠償を求めた裁判の判決が19日、岡山地裁であった。女性は自閉症スペクトラム障害で制服を着るのに抵抗があり、溝口優裁判官は「私服の着用を不許可としたのは合理的な配慮を欠いた違法行為に該当する」として、町に33万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
「やむを得なかった」と認定
判決では「校則の定めが違法となるのは、校則が社会通念に照らして著しく合理性を欠き、不当ないし不適正である場合である」としたうえで、制服の着用を求めることは「社会通念に照らして著しく合理性を欠いたものではないが、障害などのやむを得ない理由で制服を着用できない生徒にも教育を受ける機会が確保されるよう配慮することが求められる」と指摘。
そのうえで、この女性には感覚過敏を伴うことがある自閉症スペクトラム障害などがあり、制服に対する拒否的反応は障害に由来し、制服を着用できないのはやむを得なかったと認定。女性が着用を求めた私服は小学生のときの制服と同じような白のポロシャツとスカートで、ほかの生徒に悪影響を与えるような服装ではなく、学校側が私服の着用を認めなかったことは「合理的な配慮を欠いた違法行為」だとした。
その一方、女性が不登校となったのは、制服の着用が主な原因ではなく、障害やそれに起因する可能性のある生活習慣の乱れなどにあったとし、「制服着用の免除をしなかったことは登校することへの心理的障壁の一つに過ぎず、中学校の違法行為は、原告の教育を受ける権利を侵奪したとまで評価することはできない」ともした。
判決に対して、矢掛町は「判決文を見たうえで、対応を検討、判断したい」としている。