(21日、第97回選抜高校野球大会1回戦 エナジックスポーツ8―0至学館)
「ここを抑えて流れを持ってくる」。先発した至学館の尾崎陽真(はるま)投手(2年)は勝利の可能性を信じ続けた。
七回裏2死三塁。この回、エナジックスポーツの打者一巡の猛攻で点差を8点に広げられ、右翼から再びマウンドに立った尾崎投手もピンチが続いていた。
相手打者に対し、2ストライクから思い切り腕を振ると、自己最速となる135キロの直球が内角低めいっぱいに吸い込まれた。技巧派右腕が、珍しく真っ向勝負で奪った見逃し三振。マウンド上で力強くガッツポーズした。「この試合で一番気持ちがこもった球だった。自分の持っている力以上のものが出せた」
相手はベンチから指示を出さない「ノーサイン野球」が特徴。「いつ何をやってくるかわからない怖さがあった」。機動力を警戒して投球リズムを乱され、六回まで114球を要した。それでも、相手にペースを渡さず2失点で粘った。再登板した後も最後まで気持ちを切らさず、自身最多となる計140球を投げきった。「1球ごとに間合いを変える、自分のスタイルで抑えられたことは自信になった」
甲子園は憧れの場所だった。小学5年生の夏、星稜(せいりょう)(石川)のエースだった奥川恭伸投手(現ヤクルト)の活躍をテレビで見て魅了された。「試合後半になっても衰えない投球に憧れた。YouTubeで奪三振集をずっと見ていた」
小学校時代に所属していたクラブチームの卒団アルバムに書いた将来の夢は「甲子園で優勝投手」。この日、その難しさを知った。そして同時に、「夢」は「目標」に変わった。
「全国のレベルの高さを知ることができた。変化球の精度を高めて甲子園に戻り、圧倒的なピッチングをする」。2年生エースは、この悔しさを糧に飛躍する。