天平美術の傑作として名高い奈良・興福寺の国宝・阿修羅像(734年)。その制作時につくられ、今は失われた原型の顔を、奈良大(奈良市)が寺と協力し、石膏(せっこう)像としてよみがえらせた。現在とは微妙に異なる表情を、実際に目にすることができる。
三つの顔や6本の腕を持ち、憂いを帯びた少年のような表情で知られる阿修羅像は、奈良時代に流行した脱活乾漆造(だっかつかんしつづくり)。粘土でつくった原型の像の外側に麻布を漆で貼り重ね、固まったあとに内部の粘土をかき出し空洞にして木組みを入れ、最後に木くずの練りもので表面を整えて仕上げるという手の込んだ技法だ。
原型は残らないが、X線CTスキャンで内部の空洞部分を正確に計測し、3次元処理することで形がわかる。2009年の展覧会開催時に行われたCT調査では、下唇をかむ右側の顔が、原型の段階では口元をわずかに開き、微妙に違う顔つきだった事実が判明した。
奈良大は、阿修羅を含む八部…